【感想】さざなみのよる 木皿泉
「私がもどれる場所でありたいの。誰かが、私にもどりたいって思ってくれるような、そんな人になりたいの。」
誰の人生にもある、なぜだか忘れられないできごと。
それは、栄光のときであるとは限らず、むしろどうしようもなくダメなときや、かっこ悪いときであることの方が多いかもしれない。
そのとき、その記憶に一緒にいる人たちこそが、きっと人生の宝物なのだと思う。
あるひとりの女性の死から起こったさざなみは、遠く、遠くへと優しい波紋を広げていく。ときに反射して、波紋と波紋は交差する。その一瞬もまた、新たな輝きを放つ瞬間となる。
命がやどり、何事もなかったように去っていく。そのいとなみそのものが、祝福されるべきことなのだなあ。
誰かの忘れられない一瞬の片隅に、ひっそりといられるといいなと思いながら、今年もしっかりと生きていこう。
「さざなみのよる」 木皿泉 2018年
- 作者: 木皿泉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/04/18
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る