思考錯誤録

頭でっかちな人間の見た景色

【感想】さざなみのよる 木皿泉

「私がもどれる場所でありたいの。誰かが、私にもどりたいって思ってくれるような、そんな人になりたいの。」


誰の人生にもある、なぜだか忘れられないできごと。

 

それは、栄光のときであるとは限らず、むしろどうしようもなくダメなときや、かっこ悪いときであることの方が多いかもしれない。

 

そのとき、その記憶に一緒にいる人たちこそが、きっと人生の宝物なのだと思う。

 

あるひとりの女性の死から起こったさざなみは、遠く、遠くへと優しい波紋を広げていく。ときに反射して、波紋と波紋は交差する。その一瞬もまた、新たな輝きを放つ瞬間となる。

 

命がやどり、何事もなかったように去っていく。そのいとなみそのものが、祝福されるべきことなのだなあ。

 

誰かの忘れられない一瞬の片隅に、ひっそりといられるといいなと思いながら、今年もしっかりと生きていこう。


「さざなみのよる」 木皿泉 2018年

 

さざなみのよる

さざなみのよる